我々はお金で何を買うのか?

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こんにちは。てんらいです。

近頃仕事に忙殺されており、気がつけば1ヶ月振りくらいの投稿になりました。

 

さて、今回は数年前に買ったまま本棚に眠っていた“それをお金で買いますか”をようやく読了しました。マイケルサンデル氏の本ですね。一時期話題になっていたかと思います。今更な感じはありますが、備忘を兼ねてコメントを記載しておきたいと思います。

 

 

市場(お金で買うこと)をどこまで許容するのかを問う一冊

 我々が生活を営む上でお金は欠かせないものだというのは言うまでもありません。(多少の例外はあるかもですが・・・)

 お金を払って何かを得るということは、つまり市場がそこに持ち込まれているということなのですが、この本では「ありとあらゆるものに市場が持ち込まれていること」に対して警鐘を鳴らす一冊となっています。

 

割り込みを買う?

 市場の例として「割り込む権利」が登場します。身近な例で言えば、USJファストパスは正に行列への割り込みをお金で買う行為ですし、アイドルのコンサートのチケットを買い占めて転売することも本来の公平さを欠いているという点で割り込みを買う(売る)行為に含まれます。(もちろん、正規に買う行為はセーフ)あれってお金を払って買うものなの?と聞かれたら皆さんはどう答えるでしょうか?

 本書の中では、買うことへの反論として「公正さを欠くこと」と「不適切な方法で評価してしまうこと」で語られている。

 ただ、個人的にはもう一つ視点があるのではと考えています。それは特にチケットの転売に該当する話ですが、「市場価格と実際の価格の差(幻の利益)を第三者が享受することへの不許容」ではないかなと思っています。別の言い方をすると無関係の第3者が利益を得ることを許せないということです。

 

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インセンティブの話

「全体の福祉の向上」という考え方をご存知でしょうか。分かりにくい言葉だと思うので、たとえ話を一つ。

 娯楽としてのハンティングの対象として人気があり、それを禁止にしないと絶滅してしまう大型動物がいるとしましょう。一方、その大型動物を狩ることで生活を営む先住民族が存在し、政府がその民族に対して年間で狩ることが出来る頭数を限定して、その先住民族に狩りを許可しているとします。彼らが生活を営めるようにです。

 ここで、その民族がハンティングの権利を1頭あたり数千~数万ドルで販売し始めたとします。ハンティングした後の大型動物は現地民族が生活の糧にしているとしましょう。当然、政府が許可した頭数以内なので、年間で狩られる数は変わりません。

 

この場合、以下の2点においてメリットが発生し、特にデメリットは存在しません。

  • ハンターは通常許されていない大型動物のハンティングを楽しめる 
  • 先住民族は、大型動物を得るだけでなく、現金も得ることが出来る

このように、割当(全体の枠)を一旦決めてしまえば、このようなインセンティブを発生させることによってメリットが増加することを「全体の福祉の向上」と呼びます。

 ただし、このストーリーを聞いたときに全ての人が「いいね」とは思わないはずです。何か釈然としない感じがしないですか?もっと言うと「不快だ」と思った人もいるはずです。

 これは、先住民族が生活の糧のために行う狩猟を尊重する(そして特権を与える)ことと、その特権を現金利益に変えることは別物であるということなんですね。(目的の腐敗と言えます)

 

まあこんな感じでインセンティブの話も色々と記載されています。

 

 

自分の頭で考えながら読み進めるのがオススメ

 とにかく頭の整理が進む一冊です。正解を教えてくれるわけではなく、ある事柄に対して「賛成、反対の人の主張」を教えてくれるので、自分がどう考えて賛成または反対なのか思考を進めることで、頭の整理が可能です。

 

 

 最後に

 

 我々の日常にどこまで市場を持ち込むのか?ということに疑問を投げかける良き一冊。

 日常に市場を持ち込むということは基本的に格差を広げることにつながるため、ある領域において格差を生むべきではないと感じるのであれば、市場化すべきではないということになると思います。つまりこの本では、私たちがどんな生活を送りたいのか?(ある領域においては市場化せずに平等に暮らしたいとか、こっちの領域では差を付けて生活をしたい等)という自分たちの希望とリンクしていることを示唆しています。

 

是非、一度手にとって何にお金を払うことが正解なのか一度考えてみてはいかがでしょうか?

 

小説の記事一覧はこちら

comprehensive-lifehack.hatenablog.jp

 

てんらい